胎児水腫 とは胎児の全身に浮腫が見られる疾患です。浮腫とは細胞外の水分が多い状態なので、酸素や栄養が細胞にうまく移行しなくなり、各臓器は栄養不足になります。そのため生命予後は悪く、臓器の成熟が不十分になることにより体内死亡することもある疾患です。
赤ちゃんの死亡原因にもなる胎児水腫
胎児水腫の原因
胎児水腫の原因は免疫性と非免疫性に分かれます。免疫性胎児水腫は胎児の赤血球に対して母親がIgG抗体を産生し、胎児の溶血性貧血を起こすことが原因です。原因疾患にはRh式血液型不適合妊娠があります。
また、非免疫性胎児水腫の機序は原因により様々で、原因疾患には胎児貧血やパルボウイルスB19感染、TTTSなどがあります。
現在では抗Dヒト免疫グロブリンの開発により、免疫性胎児水腫の割合は激減し、9割異常は非免疫性胎児水腫になります。
免疫性胎児水腫
免疫性胎児水腫はRh式血液型不適合妊娠で起こります。Rh式血液型不適合妊娠とは、Rh(-)の母親がRh(+)の胎児を妊娠した場合に起こる疾患です。母親がRh(-)、父親がRh(+)の場合に起こります。
1回目の妊娠で胎児がRh(+)の場合に、妊娠・分娩の過程で胎児のD抗原が母体内に流入します。その後感作が成立し、母体内で抗D抗体が作られます。この時作られる抗D抗体はIgMなので胎盤を通過しません。
次にその母親が2回目の妊娠をした場合、胎盤から母体に入った胎児のD抗原に対して、抗D抗体が速やかに産生されます。この時の抗D抗体はIgGであるため、胎盤を通過し胎児に移行します。
胎盤を通過した抗D抗体は胎児赤血球上のD抗原と抗原抗体反応を起こし、胎児赤血球の溶血が起こります。このため、胎児が溶血性貧血となり、貧血が高度になると最終的には免疫性胎児水腫になります。
これらを予防するため、1人目の出生時がRh(+)で母体が未感作の場合、分娩後72時間以内に母体へ抗Dヒト免疫グロブリンを投与します。
非免疫性胎児水腫
非免疫性胎児水腫の原因は様々です。胎児貧血、TTTS、頸部リンパ嚢胞、パルボウイルスB19感染、先天性嚢胞性腺腫様肺奇形、心奇形、不整脈、胎便性腹膜炎などが原因として挙げられます。
ここではTTTSとパルボウイルスB19感染について説明したいと思います。TTTSとは双胎間輸血症候群のことで、胎盤を共有している一絨毛膜二羊膜双胎の約10%に見られる疾患です。
胎盤の吻合血管を介して両児の間に循環血液量の不均衡が生じることによって、両児の循環不全が起こる症候群です。胎児水腫は受血児に起こりやすく、受血児は循環血液量の増加により、心拡大を起こし、うっ血性心不全になります。
これが悪化すると胎児水腫になります。次にパルボウイルスB19感染は、幼児期や学童期に感染しやすいウイルスですが、妊婦が感染した場合は重篤化します。妊娠9~16週の感染がもっとも危険であり、妊娠20週以降であれば流産・早産・胎児水腫になることはありません。
パルボウイルスB19が母体に感染すると、その約20%が経胎盤感染します。経胎盤感染した胎児のうち約25%に非免疫性胎児水腫が発症します。
パルボウイルスB19は胎児の赤芽球に感染し、赤血球は破壊され、赤芽球ろうを引き起こします。そのため胎児は極度の貧血になり、その結果心不全を引き起こして胎児水腫となります。
胎児水腫の検査と管理
胎児水腫の検査は、まず初回の妊婦健診で血液のRh型を調べます。
そのときRh(-)の場合、夫のRh型も調べます。このとき夫がRh(-)の場合、間接Coombs試験を行います。Coombs試験とは、血中の抗赤血球抗体の存在を調べる検査であり、Coombs試験陽性とは抗D抗体が存在することを示します。
この間接Coombs試験が陰性の場合は間接Coombs試験を4週間ごとに行い未感作妊婦の管理を行います。間接Coombs試験が陽性の場合は抗D抗体価を2週間ごとに測り、16倍以下の場合は経過観察、32倍以上で超音波検査を行い、胎児管理をしていきます。
最後に
胎児水腫は予後の悪い疾患ですが、きちんとした管理により防ぐことも出来ます。妊婦健診を定期的に受診し、しっかり管理していくことが大切です。
まとめ
赤ちゃんの死亡原因にもなる胎児水腫
胎児水腫の原因
免疫性胎児水腫
非免疫性胎児水腫
胎児水腫の検査と管理
最後に