回旋異常 とは、分娩の際に胎児が適切な方向へ向かなかった状態を言います。回旋異常が起こると、分娩が困難になり、帝王切開することもあります。妊婦自身が防げることではありませんが、どのような病態が学び、万が一の事態に備えることが大切です。
回旋異常の病態と治療
回旋とは
はじめに、正常の回旋についてお話しします。胎児は妊娠中、母体の右側を向いていることが多く、その状態から胎児は向きを変え、産道を上手く通り抜けてでてきます。その胎児が向きを変えることを回旋と言います。回旋には第1から第4回旋まであります。
まず、第1回旋では、胎児は顎を胸に引きつけ、先進部が小泉門になります。次に第2回旋が起こり、胎児は反時計回りに回転しながら下降します。この時胎児は母体のお尻の方向を向きます。
次に第3回旋が起こり、児頭が反屈しながら娩出されます。この時胎児の頭が子宮口からでてきます。最後に第4回旋で、胎児は時計回りに回転して肩を出しながら横を向きます。この時胎児は母体の右側を向いて出てきます。この一連の流れを回旋と言います。
第2回旋の異常
回旋の異常とは、ほとんどの場合第2回旋の異常を指します。胎児が反時計回りに回転せず下降し、第2回旋が起こらない場合、もしくは時計回りに回転した場合、その後の回旋に支障をきたします。
まず、第2回旋が起こらない場合は、胎児の頭が産道に引っかかり、分娩の進行が停止します。次に、第2回旋が時計回りに進んだ場合は、胎児が母体の腹側を向くことになり、第3回旋時に胎児の頭が恥骨に引っかかります。
第1回旋の異常
第1回旋の異常は胎勢の異常と言います。第1回旋の異常では、胎児が顎を胸に引きつけないため、通過面が小さくならず、産道抵抗が大きくなってしまいます。
第1回旋の異常には、頭頂位、前頭位、額位、頭位があり、通過面が33~36cmと、正常の32cmより大きくなるため、産道抵抗が大きくなります。
回旋異常の治療
回旋の異常により、自然分娩が困難だと判断された場合は、吸引・鉗子分娩、帝王切開を行います。
まず、吸引分娩は、吸引カップを用いて胎児を娩出させる方法です。吸引カップを小泉門と矢状縫合の一部にまたがるように装着し、陣痛発作に合わせて牽引を行います。この際、吸引カップが大泉門にまたがらないようにします。
20分牽引しても娩出されない場合は、鉗子分娩、帝王切開に移ります。鉗子分娩では、ネーゲレ鉗子を用いる方法が一般的です。児頭の正確な所見を確認し、鉗子匙を児頭に当て、頭と膣壁の間に滑り込ませます。原則として左葉から右葉の順に挿入します。
無理に押し込むのではなく、鉗子の児頭湾曲を児頭のカーブに合わせて滑り込ませるように挿入し、鉗子匙が胎児の耳の前・頬に当たるように滑らせます。正確な位置に挿入できたら、陣痛発作に合わせてゆっくり牽引します。
また、吸引分娩・鉗子分娩を行っても胎児が娩出されない場合は、帝王切開が選択されます。帝王切開の術式には、腹式と膣式があり、腹式が一般的に行われています。子宮下部横切開が行われることが多くあります。
帝王切開が選択された場合は、術前処置として静脈路の確保や輸血の準備などが行われます。麻酔は胎児に影響の少ない脊椎クモ膜下麻酔または硬膜外麻酔、もしくは両方が行われる場合があります。前処置、麻酔ができたら、帝王切開が始まります。
はじめに、下腹部を横切開し、子宮を露出させ、子宮も横切開します。卵膜も破膜し、胎児の娩出を行います。その後、臍帯を切断し、胎盤の娩出を行います。最後に子宮壁、腹壁を縫合し、閉腹します。
最後に
回旋異常は母親自身が前もって防げるものではありません。あらかじめこのような事態が起こることも理解し、回旋異常が起こった場合にどのように治療するかを主治医とよく話し合っておく必要があります。また、回旋異常は誰にでも起こりうることがあると理解しておくことも大切です。
まとめ
回旋異常の病態と治療
回旋とは
第2回旋の異常
第1回旋異常
回旋異常の治療
最後に