常位胎盤早期剥離 とは様々な誘引によって胎盤が子宮からはがれてしまう状態です。産科救急疾患であり、胎児だけでなく母体にまで危険が及びます。最悪の場合、胎児死亡や母体死亡を招く疾患ですので、異常を感じたら早急に処置する必要があります。
常位胎盤早期剥離の誘因・症状・治療
常位胎盤早期剥離とは
まず、常位胎盤とは子宮の正しい位置に胎盤があるということです。受精卵は卵管を通過して子宮内に入り、子宮内膜に着床します。その後胎盤が成熟し、羊膜、繁生絨毛膜、絨毛、絨毛間腔、基底脱落膜などの構造に分かれます。
着床する位置が子宮体部にあり、できた胎盤が子宮口をふさいでいないものを常位胎盤といいます。そして、その胎盤が様々な誘引により、血行不良になり、脱落膜が壊死します。その際に胎盤がはがれ、出血することを常位胎盤早期剥離と言います。
発症誘因
常位胎盤早期剥離の誘因には様々なものがありますが、原因不明、基礎疾患によるもの、機械的原因によるものの3種類に分けることができます。基礎疾患によるものの代表は、妊娠高血圧症候群です。全妊娠の7~10%に発症し、妊娠中に高血圧や蛋白尿を伴うものです。
肥満や高血圧・糖尿病の既往、多胎妊娠の妊婦に起こりやすい症状です。妊娠高血圧症候群では、血管の形成不全や攣縮が起きることで、胎盤への血流が減少します。妊娠高血圧症候群に合併した常位胎盤早期剥離は重症化しやすいので注意が必要です。
機械的原因によるものは前期破水、羊膜除去、双胎1児分娩後など、急激に子宮内圧が低下するものと、腹部外傷など外力が加わるものがあります。その他にも喫煙や多胎妊娠も常位胎盤早期剥離発症のリスク因子になります。
症状
常位胎盤早期剥離の症状は、急激な下腹痛、少量の外出血、腹壁の緊張です。これらの症状が見られた際はすぐに病院へ行きましょう。特に前述の発症誘因の既往がある妊婦は、常位胎盤早期剥離を疑い、病院で発症誘因の既往を伝えてください。
また、急激な下腹部痛ではなく「なんとなくお腹が痛い」「腰が痛い」と症状を訴える妊婦もいます。外出血ではあまり血が出ていないように見える場合でも、胎盤内に血腫ができ、貧血を起こすこともあります。
切迫早産の際と症状が似ているので、どちらの場合でも、腹痛や外出血の際は病院に行くことをおすすめします。
予防と治療
常位胎盤早期剥離の予防法は、妊娠高血圧症に気を付ける、外傷を受けた際は病院に行く、禁煙など、妊娠生活での基本的なことになります。常位胎盤早期剥離のためだけに特に注意することはありません。
ただ、これらを守っていたからと言って絶対に常位胎盤早期剥離にならないという訳ではないので、毎回の妊婦健診はきちんと受けましょう。また、常位胎盤早期剥離の治療は、胎児が生存している場合と死亡している場合で異なります。
胎児が生存している場合は、緊急帝王切開、もしくは子宮口が開いていて、帝王切開するよりも早く胎児を取り出すことができるようなら吸引・鉗子分娩を行います。胎児が死亡している場合は、オキシトシンを使用して経腟分娩を行うか、帝王切開にて胎児を取り出します。
後述するDICの所見やショック症状がみられる際は、それらの治療を優先します。また、分娩終了後に子宮が収縮せず、出血のコントロールができない場合は、子宮摘出を行うこともあります。
重篤な合併症
常位胎盤早期剥離の重篤な合併症に産科DICがあります。産科DICは突発的に発症し、急激に進行します。DICとは播種性血管内凝固と言い、血液の凝固系が亢進し、全身の細小血管内に微小血栓が多発することで臓器障害がおこる病態です。
凝固因子と血小板が消費されるので、出血を止めることができなくなり、大量出血を引き起こします。
最後に
常位胎盤早期剥離は、症状が見られた際は早急に治療を開始する必要がある病気です。出血量が少ないからと放っておいては取り返しのつかないことになります。母体にも胎児にも危険が及ぶ疾患なので、異常を感じたらすぐに病院に行きましょう。
まとめ
常位胎盤早期剥離の誘因・症状・治療
常位胎盤早期剥離とは
発症誘因
症状
予防と治療
重篤な合併症
最後に