不妊治療で比較的妊娠する成功率の高い方法に、体外受精があります。体外受精は通常は体内で行われる受精を、卵子と精子を体外から採り出して人工的に受精させ胚にまで培養させてから子宮に戻し、着床させる方法です。
できた受精卵を次の周期に戻すことを『新鮮胚移植』といい、一旦受精卵を凍結保存させて次回以降の周期に戻すことを『 凍結胚移植 』といいます。
凍結胚移植って、聞いたことありますか?
『新鮮胚移植』と『凍結胚移植』
新鮮胚移植のメリットは凍結胚移植より費用が安く、処置が早く済むことがあげられます。しかし排卵誘発剤の影響でホルモンバランスが崩れ、妊娠しやすいタイミングで胚移植するのが難しいデメリットがあります。
一方、凍結胚移植は優秀な受精卵を長期保存できるため、子宮の状態が良い時に移植することが可能となり、妊娠率は新鮮胚移植より良いといわれています。デメリットは費用が高額であること、治療が長期化することです。
凍結胚移植とは
体外受精では、排卵誘発剤を使って卵巣を刺激し、複数の卵胞を成熟させ成熟卵を取り出します。
取り出した卵の全てが受精し胚になるわけではありませんが、複数の胚ができても移植するのは1~2個なので余りができてしまいます。
余った胚を破棄せずに、次の周期またはそれ以降の周期に移植するため、凍結して保存しておく方法を凍結胚移植といいます。
凍結保存するため、1回の採卵で複数回の移植が可能になり妊娠の機会も大幅にアップします。また排卵誘発剤を繰り返し使用する必要がないため、身体への負担も軽減できます。保存した胚で、時期をずらして二人目や三人目の妊娠・出産を目指すこともできます。
大きな赤ちゃん
2007年~2008年にかけて、体外受精や顕微受精で生まれた出生児と日本全体の出生児の出生時体重を調べた調査によると、凍結胚移植で生まれた赤ちゃんの平均体重は、新鮮胚移植で生まれた赤ちゃんや平均出生体重より重いことがわかっています。
これは、受精卵が着床する時の子宮内膜環境に原因があると言われています。新鮮胚移植や自然移植は子宮内膜の状況に関係なく着床するため、必ずしも子宮内膜がベストな状態であるとは言えませんが、凍結胚移植は子宮内膜の状態を観察し、一番ベストな状態である時に着床させるため、胎児にとっても一番良い環境で成長できるためだと考えられています。
また、体外移植は全般的に多胎児になる可能性が高くなります。自然妊娠の場合は通常、子宮の中に受精卵が1個であるのに対し、人工の場合は受精卵を2~3個入れるためです。
凍結胚移植にかかる費用
体外受精を含む高度生殖医療は保険が適用されないためかなり高額になります。特に凍結胚移植は胚を凍結、保存、融解するためにコストが掛ります。主な治療費の平均は合計で約45~60万円となっています。
内訳
- 体外受精30~50万円
- 胚凍結保存 5万円
- 凍結胚移植 10万円
また1回の移植で成功する確率は低く、大半は3~6回の移植で妊娠となっており、移植の回数分追加費用が発生しています。そのため費用を払い続けることができず、途中であきらめてしまうカップルも多く存在しています。
厚生労働省の特定不妊治療支援事業
近年の晩婚化に伴い不妊治療を受ける人の数が年々増え続けています。2012年度に体外受精や顕微受精で生まれた赤ちゃんは37,953人となっており、今後さらに増える見込みです。
そのような背景から、国は体外受精に掛る費用の一部助成金を2004年度から交付するようになりました。助成の金額は自治体によって異なりますが、人工授精1回に付き15万円程度を年に2回まで受けられるところが多いようです。
まとめ
凍結胚移植って、聞いたことありますか?
『新鮮胚移植』と『凍結胚移植』
凍結胚移植とは
大きな赤ちゃん
凍結胚移植にかかる費用
厚生労働省の特定不妊治療支援事業