妊娠したと喜んだのも束の間、妊娠中にはたくさんのトラブルが潜んでいます。多くの妊婦さんが経験するつわりや便秘などから、お腹の赤ちゃんの生死に係わる重篤なトラブルまでさまざまです。
その中の一つ 胎児水腫 と診断された場合、どんな病気で、どんな治療法があるのかを紹介します。
胎児水腫と診断されたら
胎児水腫とは
さまざまな要因から胎児の腹部・胸部などに多量の水が溜まり、全身が浮腫み、いわゆる「水ぶくれ」状態になっている病気です。心不全や重症な貧血を主な病状とします。発生頻度は約0.6%程度で、とても稀な病気と言えます。
胎児水腫の原因
原因の一つに免疫性胎児水腫であるRh式血液型不適合妊娠があり、血液型がRh(-)の母親からRh(+)の赤ちゃんが産まれる時に起こる病気です。
また非免疫性胎児水腫には、先天性心疾患や染色体異常、母親が妊娠中にりんご病などにかかった場合にみられる胎児のウイルス感染症などがあります。
胎児水腫の診断方法
主に胎児水腫の診断は妊婦検診に含まれる超音波検査で発見されます。胎児の頭部皮下組織のむくみ、脾腫、胸水や腹水が確認されると胎児水腫と診断されます。エコー画像では白い皮膚の下に溜まった水が黒く映ります。
診断は11~31週頃とされていますが、妊娠週数が進むにつれて明確に判断できる様になります。
胎児水腫の治療法
胎児水腫を引き起こした原因により治療法は異なります。胎児水腫は進行が早く、溜まった水が肺や心臓を圧迫して、胎児水腫の赤ちゃんの多くが心不全を起こすため、出産前に亡くなってしまいます。
また、産まれても、肺の成長が不十分なことによる呼吸困難や脳への血流不足で発達障害の可能性もあり、予後が良くないとされています。しかし、原因次第では劇的に症状が改善する場合もあります。
胎児胸腔-羊水腔シャントチューブ留置術
直径2ミリ、長さ4センチ程度の管を留置して、赤ちゃんの胸腔内に溜まっている水を羊水へ排出させる方法です。胸水に限定され、妊娠20週以降でないと治療が難しく、大学病院など一部の医療機関でしか行われていません。
しかし、この治療法は命を救うだけでなく、生後の発達障害を減らす効果もあります。
輸血
母親がりんご病などウイルス感染したことにより、重症な貧血を起こした場合に、母親のお腹から針を刺して、赤ちゃんに直接輸血する方法です。また免疫性が原因で、間接クームス検査にて値が上昇し、重症な貧血の場合も、妊娠週数と胎児状態により分娩するか輸血するかを判断します。
交換輸血
原因が免疫性で、胎児水腫により重篤な状態に陥っている場合、早期に赤ちゃんを娩出して交換輸血を行います。交換輸血とは一方から血液を放出し、等量の輸血を行い、血液をそっくり入れ替える治療法です。
治療薬投与
不整脈などの感染症が原因の場合に治療薬投与が用いられる場合があります。胎児水腫になった赤ちゃんに対し、母親に治療薬を投与することにより胎盤を通じて、効果を得られることもあります。
胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術
1つの胎盤を一卵性双生児が共有している場合に起こる特殊な病気が原因で胎児水腫が発生する際に用いられます。妊娠16週~26週に限られますが、胎盤表面の吻合血管を焼灼していく治療法です。
胎児水腫の予防
免疫性の場合、分娩後母親に抗D抗体の注射をすることで、次回妊娠時の予防となります。また妊娠中に注射する方法もあります。
非免疫性の場合、特別な予防法がないため、感染症に気を付けることが重要となります。人混みに出掛けることを控える、また予防接種を受けることにより、感染症のリスクを減らします。
胎児水腫と診断されたら
胎児水腫と診断されても、決してご自身を責めないでください。胎児水腫の多くは防ぎようのない原因から起こります。まず胎児水腫という病気を理解して、今後リスクを最小限に減らすにはどうしたら良いかを考えましょう。
他の病気も同様です。これから産まれてくる大切な命を1つでも多く救うために、しっかりとした知識を身に付け、妊娠中の過ごし方を見直すきっかけとしてください。
まとめ
胎児水腫と診断されたら
胎児水腫とは
胎児水腫の原因
胎児水腫の診断方法
胎児水腫の治療法
胎児水腫の予防
胎児水腫と診断されたら