正常な子宮内膜は子宮体部の内側を覆っています。ところが、子宮内膜と同じ組織が本来あるべき場所以外に存在したり、増殖したりすることを 子宮内膜症 といいます。
今回は、手術ではなくホルモン療法である ピル を使った治療について解説します。
ピルを使った子宮内膜症の治療
子宮内膜症の診断と検査
子宮内膜症の症状は、発症する場所によっても違いはありますが、激しい生理痛が共通する症状です。骨盤内で子宮内膜症は、長期になればなるほど月経以外のときにも下腹部痛や腰痛があります。
症状は放置しておくと次第に悪化し、不妊の原因にもなるため、異常を感じたら早期の受診が大切です。自覚症状以外にも、子宮内膜症になると癒着をおこし子宮が動きにくくなることもあるでしょう。
病院では、痛みを伴うしこりの有無や卵巣の大きさも診察して診断を行います。診断は、内診と直腸診、超音波検査などを行い子宮内膜症にかかると陽性を示す血中腫瘍マーカーを測定するのです。
もっと細かな診察が必要であれば、MRIや子宮卵管造影法、腹腔鏡検査まで行う可能性もあります。
ピルを使った治療方法
子宮内膜症の治療方法は、ピルを使ったホルモン療法と手術療法があります。年齢や妊娠の希望の有無によって治療方法を検討しましょう。
子宮内膜症の治療に使うピルとは、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンを指します。ホルモン療法は、症状の改善や手術後の再発の予防、妊娠の可能性を向上させる目的として行われるものです。今までは、女性ホルモンであるピルを使った治療方法が盛んでした。
しかし、現在はダナゾールという男性ホルモン誘導体と偽閉経療法が多く行われています。2種類の薬の作用は異なりますが、両方とも子宮内膜の増殖を抑えることができます。一般的には約半年間投与して治療することになるでしょう。
ダナゾールは経口薬で、偽閉経療法では鼻孔噴霧薬と注射の2種類があります。治療中は、排卵と月経を止めることになるのです。
ときどき、薬で治療している最中に出血があることもありますが、少量で短期間であれば心配はないでしょう。症状がひどいときには、少量のピルを投与することもあります。
妊娠を希望する場合の治療方法
子宮内膜症の治療は、ピルやダナゾールのような男性ホルモン誘導体を使った薬物療法と手術療法があります。妊娠を希望する人でも手術療法が可能であることもあるため、主治医と相談して治療方針を決めるようにしましょう。子宮内膜症の手術治療は3種類あります。
まず一つ目は、根治手術です。子宮摘出と内膜症になった部分の摘出を行います。妊娠を希望しない人やピルやその他の薬物を使った治療では効果が出なかった重症なときに行う手術です。
二つ目は、準根治手術です。子宮の全摘出と内膜症になった部分を摘出します。正常な臓器はできるだけ残す手術のため、術後の不快な症状を防ぐことができます。しかし、子宮内膜症の再発を完全に防ぐことはできません。
そして三つ目が保存手術です。妊娠を希望する人のための、妊娠できる能力を残す手術になります。手術方法は、開腹手術と腹腔鏡手術があり、開腹手術では発症部位の摘出と形成、癒着があれば剥離して子宮の位置を強制するのです。
腹腔鏡手術では、発症している個所を焼灼し、癒着があれば剥離します。チョコレート嚢腫があれば、摘出も行います。子宮内膜症は、20年前よりも4倍近く増加しているのです。
子宮内膜症を放置しておくと、癒着によって卵管が狭くなり卵管の可動性が悪くなります。そうなると、卵巣から排出された卵子が卵管内に取り入れることができなくなり、不妊症を引き起こすのです。早期発見し、自分に合った治療を行いましょう。
まとめ
ピルを使った子宮内膜症の治療
子宮内膜症の診断と検査
ピルを使った治療方法
妊娠を希望する場合の治療方法