弛緩出血とは、産科出血の中でも出血量が多いことで有名です。弛緩出血は、出産後の子宮の収縮が悪いために子宮の内側から出血が起こります。出血が多いと母体を弱め産後の育児に支障をきたすことになります。
今回は、 弛緩出血 の原因と処置方法について解説します。
弛緩出血の原因と処置方法
弛緩出血の原因になる微弱陣痛
弛緩出血は、多胎妊娠や高齢出産で陣痛が弱く長く続いたときに起こることが多いようです。通常の陣痛の周期はだんだんと短くなり、強さも比例して強くなってくるものでしょう。
しかし、微弱陣痛になると陣痛が強くなることはなく、周期も長いままの状態が続きます。陣痛の始まりから弱くなってしまうこともあれば、途中から微弱陣痛に変わることもあり微弱陣痛になると出産までにかかる時間がとても長くなるのです。
微弱陣痛が起こると、弱いながらも子宮が収縮を長時間続けていなければならなくなり、出産後の収縮が弱くなってしまいます。そうなると、止血能力が低下し弛緩出血を引き起こすことになるのです。
微弱陣痛やその他の原因で分娩までに時間がかかるときには、鉗子分娩や吸引分娩に切り替えて分娩を早く終了させることもあります。鉗子分娩は金属のスプーンのハサミのような形で、胎児の頭をスプーンではさんで膣から引っ張り出します。
赤ちゃんを傷つけることもない方法です。吸引分娩は吸盤のような吸引カップを胎児の頭に吸いつけて引っ張り出します。鉗子分娩よりも引っ張る力は弱くなりますが、熟練した技術も必要なく使える方法です。
弛緩出血が起きた時の処置
出産後の出血は、出産の後に子宮が強く収縮し血管が締め付けられて自然に止血されるものですが、子宮が収縮せずに出血が止まらない状態になると弛緩出血になるのです。
弛緩出血以外にも頸管裂傷や子宮破裂など、分娩時には大量出血が起きる可能性があります。弛緩出血を含む産科出血には、子宮収縮薬を使って子宮収縮を促進したり開いた傷口を縫合したりして止血をします。
子宮収縮薬としては、下垂体の後葉ホルモンの一種であるオキシトシンやプロスタグランジン剤を点滴することが多いでしょう。それでも出血が止まらない場合には、子宮摘出の手術を行い止血することもあるのです。
ほとんどの弛緩出血は、子宮収縮薬の投与や手術によって止血することができるのですが、出血量が多量になったら輸血を行う必要があります。
出産時に弛緩出血が起きた時には、早急な処置が必要になるのです。多胎妊娠や出産に対して心配な点があるならば、手術や緊急処置が可能な病院を選んでおくと安心でしょう。
弛緩出血の予防と対策
弛緩出血は多胎妊娠や妊娠高血圧症候群であるとなりやすい傾向があります。多胎妊娠の場合には妊娠後期に入るとお腹も大きくなり妊娠高血圧症候群の症状も出やすくなるのです。
また、正常な妊娠経過をたどり出産までたどりついても子宮が引き伸ばされているため子宮の収縮能力が低下していることがよくあります。
弛緩出血を防ぐためにも、多胎妊娠とわかったら定期検診の受診回数を増やし、妊娠高血圧症候群にも十分に注意をして早期発見を心がけるべきです。
しかしどんなに気を付けていても弛緩出血は分娩後に突然起こることがあります。そのため、妊婦は事前に血液型を調べ輸血が必要な事態に備えておく必要があるのです。
輸血は、他人の血液を体内に入れることになります。輸血に関して心配であるならば、前もって自分で輸血用に採血をしておき、輸血が必要な事態になったら自分の血液を輸血する自己血貯血を選択できる病院もあります。
女性の体は、出産に備えて血液量を増やし、多少の出血にも耐えられるように準備をする力を備えています。出産前に貧血と診断されたら、出産前には貧血を治すように鉄剤を服用するなどの準備も大切です。
まとめ
弛緩出血の原因と処置方法
弛緩出血の原因になる微弱陣痛
弛緩出血が起きた時の処置
弛緩出血の予防と対策