産後2週間程度で、母体は急速に回復し妊娠前の状態に戻ります。回復に伴い、母体にはさまざまな変化が起こるのです。食欲や体温のほか、腹痛も代表的な症状のひとつです。
今回は 産後 に起こる 腹痛 の原因について解説します。
産後に起こる腹痛の原因
子宮の収縮による腹痛
出産時に起きた子宮の収縮は、胎児と胎盤を体外に排出してからも続き、子宮はどんどん収縮していきます。これを子宮復古といいます。子宮復古のときに腹痛を感じますが、心配はいりません。
出産時におへその下まで下がった子宮底が出産翌日にはおへその上にまで位置が戻りますが、子宮底の位置はその後も1日指1本分程度ずつ低くなっていきます。産後6日程度たつと収縮がゆるやかになり、子宮自体も小さくなっていくのです。
産後2週間程度で子宮は骨盤内に入り、おなかの上からは確認できないほどになります。しかし、子宮が妊娠前の大きさに戻るまでにはもう1週間程度はかかる人が多いでしょう。
このような収縮作用は初めから子宮筋に備わっているものですが、最近は産後の出血を少なくし産後の回復を早めるために子宮収縮薬を補助的に点滴や服薬で補うことが多いのです。
子宮の収縮が悪く、産後1か月以上経っても子宮が大きいままで悪露が血性や膿性の場合は子宮復古不全といわれ、卵膜や胎盤などの一部が子宮の中に残っている可能性があります。症状が重い場合には、子宮内を軽く掻きとる処置を受けることになるでしょう。
後陣痛による腹痛
出産した後にもときおり下腹部に痛みを感じることがあります。これを後陣痛といい、子宮の収縮に伴うもので通常は出産当日か翌日には治るものです。しかし個人差があり、まったく感じない人もいれば1週間程度は強い腹痛に悩まされる人もいます。
一般的に後陣痛は初産婦よりも経産婦のほうが強く感じるようです。これは、2度目以降の出産は慣れがあるため、子宮の収縮が強いためと考えられています。眠れないほどの痛みがある場合には、医師に相談し鎮痛薬を処方してもらうといいでしょう。
また、授乳中や赤ちゃんの泣き声を聞くことによっても後陣痛が起こることがあります。これは赤ちゃんが乳首を吸う刺激や泣き声が刺激となって子宮を収縮させるためです。
感染による腹痛
出産の後の子宮や膣、外陰部には小さな傷が無数にあります。特に子宮の内面には広い範囲ですりむき傷がたくさんできており、これらの傷口からは血液やリンパ液が流れ出ているのです。血液やリンパ液は膣から悪露となって外に流れ出します。
出産直後の悪露は、ほとんど新鮮な血液で産後3日間程度でも赤い色をしていることがほとんどです。産後5日間程度で傷が回復するにつれて新たな出血がなくなり、褐色になり量もすくなくなります。
悪露の色がだんだんと薄くなり、黄色くなってくれば傷口はほとんど治ってきたと考えていいでしょう。通常ならば産後3週間程度で悪露は黄色になるはずです。
悪露は細菌の感染源になりやすいため、悪露交換のたびにきれいにふき取り外陰部を清潔にしておくように注意しなければなりません。正常な悪露は甘酸っぱい匂いがしますが、感染を起こすと臭くなり色も汚く変色します。
悪露に変化がなく量も減らない場合や腹痛を伴う場合には感染が考えられるため、早めに医師に相談するようにしましょう。
産後の情緒不安による腹痛
出産が無事に済んで安心したころからなんとなく気分が沈み込む人がいます。このような産後の憂鬱な状態をマタニティーブルーズというのです。マタニティーブルーズになる人は、初めての出産を経験した人に多いですが普段から神経質でまじめな人が陥りやすいと考えられています。
腹痛といっても下腹部の痛みではなく、胃の不快感や胃痛の場合には精神的な不安が原因であることも考えられるのです。出産を終えたあとは、拍子抜けした状態になることがマタニティーブルーズの原因ともいわれています。
憂鬱な状態は数か月続くこともありますが、多くは2週間程度で治ります。マタニティーブルーズが原因の腹痛を回復させるには周囲の人々の協力が必要です。
まとめ
産後に起こる腹痛の原因
子宮の収縮による腹痛
後陣痛による腹痛
感染による腹痛
産後の情緒不安による腹痛