母体は産後8週間程度で急速に回復しますが、心身ともに大きな変化が起きる時期でもあるのです。とくに産後は腹壁がゆるみ腸の運動も弱くなるので便秘しやすくなります。
今回は 産後 の不快な症状である 便秘 の原因と解決方法についてお話しします。
産後の便秘の原因と解決方法
会陰切開の傷が原因の便秘
会陰とは外陰部の膣と肛門の間の部分をいい、分娩のときは会陰がもっとも引き伸ばされる場所になります。胎児も会陰でとどまることが多いため、胎児が圧迫されて具合が悪くならないように、伸びきった会陰部にハサミを入れて開きやすくすることを会陰切開といいます。
切開する痛みはほとんどなく、傷も自然とできた裂傷よりもきれいに早く治るため、会陰切開はほとんどの分娩で行われているのです。
しかし、産後は会陰切開の傷口がいきむことによって開いてしまうのではないかという恐怖から便秘になる人が多くいます。会陰切開は傷口を縫合して閉じてあるため、多少の痛みや引きつれる感覚があることは確かです。
しかし、排便によるいきみが原因で縫合個所が開くことはありません。退院前に一度は排便し、排便に対する恐怖を取り除いてから退院することが一番の解決方法です。
母乳による水分不足が原因の便秘
産後3日程度になると乳房が張り、乳首を押すと母乳が出るようになります。初乳のうちは分泌量が少ないのですが、産後10日目ごろには乳白色の成乳になり量も1日1,000ミリリットル以上になります。
出産前よりも、母乳に使われる水分量が増えるため、産後の便秘は水分不足が原因になっていることがあるのです。水分が不足すると便が固くなり、排便が困難になります。産後はこまめな水分補給を心がけるようにしましょう。
水分摂取の目安は季節によって変わりますが、だいたい4リットル程度です。カフェインが含まれていない、ハーブティやミネラルウォーターを選ぶようにしましょう。
牛乳は便秘には適した飲み物ですが、脂肪分が多いため乳腺炎の原因になることがあります。牛乳は朝コップ1杯程度にし、水分補給は脂肪分と糖分が含まれないものにします。
排便のタイミングを逃すことによる便秘
産後は昼夜問わず赤ちゃんのお世話が続き、自分のことはすべて後回しになりがちです。産後3日過ぎたころからは急に精神的に不安になるマタニティブルーズになる人もいます。
産後の育児疲れや睡眠不足が原因で便秘になることもありますが、忙しさのあまり便意に気がつかなかったり、便意を我慢したりすることによって便秘になることが多いのです。
便秘は慢性化するほど治りにくくなります。産後は家族や周囲の人に育児に協力してもらい、ゆとりをもつことが大切です。
油脂不足と運動不足による便秘
産後は質のいい母乳をつくるために油脂の摂取を制限しがちですが、極端な制限は便秘を引き起こします。オリーブオイルなど質のいい油は、摂取することで便をやわらかくし潤滑油の役割も果たします。
授乳中は下剤の使用はできるだけ避け、食べるもので便秘を改善させるようにしましょう。オリーブオイルはスプーン1杯程度を飲むと効果的ですが、そのままで飲みにくい場合はヨーグルトに混ぜて飲むといいでしょう。
そして、産後は腹筋や肛門周辺の筋力が低下しています。産後1か月は外出する機会も少ないため運動不足になりがちですが、運動不足は便秘の大きな原因の一つです。家の中でできる産後ヨガやストレッチ体操を無理がない程度に行うようにしましょう。
産後の便秘が頑固なときは、出産時に肛門を開け閉めする肛門括約筋が傷ついてしまったことも考えられます。食事や運動などに注意しても改善がみられない場合は、肛門科か産婦人科を受診することをおすすめします。
まとめ
産後の便秘の原因と解決方法
会陰切開の傷が原因の便秘
母乳による水分不足が原因の便秘
排便のタイミングを逃すことによる便秘
油脂不足と運動不足による便秘