近年では晩婚化が進み、それに伴い出産時の年齢も高くなっています。そのため、不妊治療を行う人も多くなっています。不妊治療で使用する排卵誘発剤は、妊娠率を高めるために使用されます。しかし、副作用があることも事実です。
卵巣過剰刺激症候群 という副作用は、重度になると生命に関わります。そのため、不妊治療を開始する前からしっかりと知っておくことが大切です。
不妊治療の副作用、卵巣過剰刺激症候群の症状は?
そもそも不妊治療とは
WHOでは不妊症の定義を「2年間の不妊期間をもつもの」としています。しかし、不妊因子がなければほぼ100パーセントが妊娠することを考えると、1年ないし1年半以上妊娠しない夫婦が妊娠を希望した場合、不妊の検査と治療を開始してよいと考えられます。
無月経・子宮内膜症・子宮筋腫などの不妊症と関係しうる疾患をもっている場合や、高年齢の女性では、1年という制約がなくても診療を開始することもあります。
妊娠が成立するためには、排卵因子、男性因子、卵管因子の3つがそろう必要があります。これらのうちどれか1つに障害があるだけで不妊症の原因となります。いくつか重なることもあります。
それぞれの因子の割合は、排卵因子が29パーセント、卵管因子が36パーセント、男性因子が31パーセントです。およそ1/3程度とされていますが、重複もあります。
不妊原因を男性因子、女性因子に2つ大別することもでき、おのおのが1/2とする考え方もあります。
排卵誘発剤
自然の月経周期では、主席卵胞だけが成熟し、排卵します。1個の卵胞に頼るとなると、成功率が低くなります。そこで、成熟した卵子を数多く採取するために、通常は排卵誘発が行われます。排卵誘発剤を連日投与し、多くの卵胞を発育させます。
外来で排卵誘発剤の注射と並行して、少なくとも2~3日に1回、経腟超音波で卵胞発育をモニターします。
体の管理
注意しなければならないことは、プロゲステロンが不十分になりがちになるため、採卵翌日から注射または膣坐薬でプロゲステロンを連日補充する必要があります。2週間は行い、妊娠反応が陽性で妊娠が成立した場合には、さらに胎児心拍が確認されるまで続けます。
しかしながら、30代前半までの着床率は30~40パーセントですが、40代になると10~20パーセント以下に低下します。これは、加齢による妊娠率の低下は卵子の質の低下によるところが大きいと考えられます。
卵巣過剰刺激症候群とは
排卵誘発を使用し、卵巣過剰刺激症候群を発症するかどうかは、個人の体質により大きく変わります。また、胚移植後は、妊娠したかどうかにかかわらず、卵巣過剰刺激症候群に対する注意が必要です。
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
排卵誘発剤の使用による副作用の1つです。排卵誘発の時に、卵巣の中の卵胞が過剰に刺激されることにより、卵巣がはれ上がり、その表面の血管から水分が腹腔内へ漏れ出ることが原因となります。
重度の場合は腹水の貯留や、血栓症などをおこすなど、生命にかかわることもありうるため、超音波で卵巣を観察するだけではなく、全身状態にも注意を払う必要があります。
1度重度の卵巣過剰刺激症候群を経験すると、同じような治療は2度と行うことができないことを理解しておきましょう。
卵巣過剰刺激症候群の症状
腹部膨満、急激な体重増加、息苦しさ、乏尿、腹痛、腰痛などは自覚症状があると思います。しかし、卵巣腫大、腹水の貯留、白血球数・ヘマトクリット値、血圧低下などは病院に行き初めてわかる症状です。
不妊治療を始める前には、リスクについての説明を受ける必要があります。しっかりと納得した上で、不妊治療を開始しましょう。
まとめ
不妊治療の副作用、卵巣過剰刺激症候群の症状は?
そもそも不妊治療とは
排卵誘発剤
卵巣過剰刺激症候群とは