タイミング療法など自然妊娠を試みる治療を続け、ある程度不妊治療と向き合った後に検討する治療のひとつに人工授精があります。
今回は 人工授精 についてご紹介します。
人工授精という選択
不妊治療として人工授精という選択
人工授精とはなんらかの原因で自然妊娠が不可能な場合に、選択される治療法です。精子を人工的に子宮に注入することで受胎を促す治療方法です。
受精する段階こそ人工ではありますが、受精から受胎までは通常の妊娠と変わらず、自然のシステムに近い治療方法で、比較的スピーディーに行えます。
人工授精の種類
人工授精とは、卵子と精子を採取し受精させるシステムを想像する方がいますが、これは体外受精であり、一般的に人工授精といえば、採取した精子を子宮へ注入器具を使って直接注入する方法を指します。この人工授精の中には2つの種類があります。
AIH
配偶者間人工授精と呼ばれる方法です。これは精子と卵子を配偶者同士から採取して行われる方法です。現在日本ではこちらの方法が一般的です。
条件として、排卵がきちんと行える必要があるため、卵管通過障害がないこと、受精できる力がある精子が作られていることなどが条件になります。また精子を精査して自然妊娠より妊娠の確率を上げることができます。
AID
これは非配偶者間人工授精と呼ばれる方法です。配偶者以外の精子を使うため、遺伝子的にはドナーの遺伝子を受け継ぎます。
これは男性側の精子が少ない場合や元気がない場合、無精子症などが原因の場合、採用する方法です。日本でも行われていますが、AIHに比べて条件が厳しく、誰でも受けられるというものではありません。夫婦が希望することは勿論ですが、女性側に問題がないことも条件に入ります。
人工授精にかかるコストとリスク
人工授精は体外受精などに比べると安価で更に自然に近い妊娠というメリットが有ります。一方で一般的にAIHでは5~10%、AIDは3~4%の成功率で、1回あたりで受胎する確率はけっして高いものはありません。
運良く一度の治療で受胎できればいいのですが、繰り返し治療を受けるケースも多くあります。保険診療が効かないため、だいたい一度に1~3万円程度の費用がかかるため、それを数回繰り返すことになるとコストも増していきます。
また、母体側も排卵についてサポートが必要な場合、排卵誘発剤を使用することがあります。このケースでは、多胎妊娠を引き起こす場合があります。双子程度は一般的ですが、中には4つ子、5つ子などの可能性もあり、妊娠できたとしても経過に注意が必要なケースがあります。
また若ければ若いほど成功率は上がるので、検討しているなら、できるだけ早くトライしてみることをおすすめします。
カップルに訪れる精神的な負担
繰り返し行う治療や、卵子や精子のチェック、そんな手間を繰り返してもなかなか授からないなど、不妊治療は行ったことが必ず報われるわけではありません。
負担があれば成果が確実に現れるわけではないため、終着点が見えづらく、費用の負担、加齢のプレッシャーなど、じわじわと精神的な負担が増してくる場合があります。
互いに同じ方向を見て、支え合うことが大切です。費用だけでなく、人工授精のトライ回数、その後別の治療への移行など、主治医を交えて考えておくことが大切です。
幸せな家族とは
不妊治療を行う上で、人工授精はポピュラーな方法ですが、最終手段というわけではありません。人工授精で子供を授かる場合、授からない場合と、結果の差はどうしても生じてしまいます。
不運なことに望む結果が得られなかった場合、その後のステップへ進むのか、夫婦だけの生活を選ぶのか選択することになります。人工授精は闇雲に何度もトライすればいつかは必ず成功するというものではありません。
子は授かりものというように、確実に授かる方法はこの世界のどこにもないからです。不妊治療を続けるにあたって、人工授精を検討する頃には、パートナーと広い視野で幸せな家族をどう考えているか、話し合うべきです。
不妊治療をいつまで続けるのかなど、方針を合わせておく必要があります。それは経済的負荷や精神的負荷、肉体的負荷をお互いに思いやることにも繋がります。
まとめ
人工授精という選択
不妊治療として人工授精という選択
人工授精の種類
人工授精にかかるコストとリスク