「妊娠高血圧症候群について理解し、早期に対処しましょう(前編)」では、妊娠高血圧症候群とはどのような疾患なのか、またどのような人が患いやすい疾患なのかご紹介しました。後編では、 妊娠高血圧症候群 が及ぼす影響や治療法、また予防法をご紹介します。
妊娠高血圧症候群について理解し、早期に対処しましょう(後編)
妊娠高血圧症候群が及ぼす影響
妊娠高血圧症候群はお母さんにもお腹の中の赤ちゃんにも悪影響を及ぼすことがあります。重症化した場合、子宮や胎盤の血流が悪くなり、お腹の中の赤ちゃんに十分な栄養や酸素が行き届かなくなる可能性があります。
十分な栄養が赤ちゃんに届かないと赤ちゃんはなかなか大きくなれず、通常よりも小さな赤ちゃん、すなわち低出生体重児となることがあります。また、十分な酸素が届かないと赤ちゃんは低酸素状態となり、脳に影響を与えることがあり、最悪の場合お腹の中で亡くなってしまうこともあります。
また、子宮の収縮により血流がさらに悪化するため、赤ちゃんが酸素不足となり、心拍に異常をきたすことがあります。その場合、帝王切開などでできるだけ早く赤ちゃんを取り出す必要があります。
お母さんの身体に生じる影響としては、子癇と呼ばれる痙攣や脳出血などの脳血管障害、血液中の赤血球が壊され、肝機能が悪化し、血小板が減少するHELLP症候群、赤ちゃんが生まれる前に正常に子宮に付いている胎盤が剥がれ落ちる常位胎盤早期剥離、肺に水が溜まる肺水腫などがあります。
中には妊娠高血圧症候群ではない妊婦さんに生じるものもありますが、妊娠高血圧症候群の妊婦さんに生じる割合が高くなっています。いずれの場合も、母子ともに危険な状況に陥ることがあります。赤ちゃんを早く外に出す場合や、お母さんの命を最優先させることになる場合もあります。
妊娠高血圧症候群の治療法
基本的には生活習慣の改善が必要となってきます。
食事療法
1日のタンパク質量、塩分量、水分量を考えた上でカロリー摂取制限を行います。きちんと1日3食摂取することが基本で、1食1食の質の見直しを行います。肥満度によりメニューは異なります。
安静
疲労やストレスを溜めないよう安静に過ごします。場合によっては赤ちゃんのことを無視した行動を取らないよう、入院による管理が必要となることもあります。
生活習慣の改善を行っても、高血圧が続く場合は薬物療法を行います。妊娠中の薬の使用は不安に感じるかと思いますが、高血圧が続く方が危険です。正しく使用すれば赤ちゃんに影響はほとんどない薬があるため、薬が医師から処方された場合は指示通りにきちんと服用するようにしましょう。
最も効果的なことは妊娠の中止です。妊娠自体に原因があるため、重症化し母子共に危険と判断された場合は赤ちゃんの大きさに関係なく帝王切開での出産が選択されることがあります。
現在の日本の医療では、小さく生まれた赤ちゃんでも無事に育つ環境が整っています。出産が最善の策と医師が判断した場合は、現代医療を信頼し、安心して出産に臨みましょう。
妊娠高血圧症候群の予防
まずは疲労やストレスを溜めないよう、しっかり休養と睡眠を取ることが重要です。疲労やストレスの原因が分かる場合は直ちに断ち切り、細かい作業は避け、早めに布団に入ることを心がけましょう。
疲労を避けようと、何もせずにじっと家の中でゴロゴロ過ごしてしまう場合がありますが、それは逆に疲労を溜めることにつながります。疲労を感じない程度の軽いウォーキングや家事など適度に身体を動かすことも必要です。
最後に大切なことは精神安定です。妊娠中は様々な不安を抱き精神的に不安定になりがちですが、イライラやストレスは大敵です。自分なりにリラックスできる環境を整え穏やかに過ごしましょう。
まとめ
妊娠高血圧症候群について理解し、早期に対処しましょう(後編)
妊娠高血圧症候群が及ぼす影響
妊娠高血圧症候群の治療法
妊娠高血圧症候群の予防